2001年1月31日午後3時55分ころ、羽田発那覇行き、B747型機と釜山発成田行き、DC-10型機が焼津上空で、ニアミスを起こしました。両者の間隔は、110m(機長の報告では約10m)。 衝突回避に伴う操作により、100人の負傷者が出ました。
東京地検は、航空機に誤った指示を出した国土交通省東京航空交通管制部の管制官2名を業務上過失傷害罪で在宅起訴しましたが1審では無罪判決となりました。
検察は控訴し、東京地裁は1審の無罪判決を破棄し、両管制官に逆転有罪判決を言い渡しました。
これに対し管制官側が最高裁に控訴しましたが、最高裁はこれを棄却しました。
私は、この事故に関係した東京航空交通管制部で、12年間、管制官として勤務しました。その後、ヒューマンエラーの研究に従事し、このニアミス事故の調査においては、事故調査委員会の主催した意見聴取会で私の考えを述べさせてもらいました。
この事例をベースにヒューマンエラーやシステム安全について、私の考えを4回に分けて説明します。
1.事故調査と裁判結果および事例理解のための基礎知識
2.事例の説明:ニアミスの経緯
3.問題点と背後要因
4.最高裁判所の判決に対するコメント