なぜ、そうしなければならないか、という理由の説明が重要

政府が国民に訴えているコロナ感染を広げない方法は果たしてうまく伝わっているでしょうか?また、それで感染対策は大丈夫でしょうか。
政府は、関係省庁を通じて通達を出したり、マスコミを通じたり、ホームページから国民へのコロナ感染対策を訴えています。例えば、「3密」「ソーシャルディスタンスを2mとりましょう」「〇名以上の宴会はやめましょう」「手を洗いましょう」などと呼び掛けています。はたして、これでうまくいくでしょうか。もちろん、100%の対策は不可能であることは十分理解しているつもりです。ただ、もう一歩、すすめた説明が必要ではないでしょうか。ヒューマンファクター工学的な視点で見てみましょう。
私は、もっと本質的なことを解説すべきだと思います。
感染経路は、すでに説明したように、
(1)飛沫感染 唾が飛んで、それを吸い込んで感染
(2)接触感染 感染者の体液が直接、付着して感染
(3)空気感染 空中に浮遊している水分にウィルスが付着して、それを吸引して感染
です。これらの3つの感染経路を遮断するためには、専門的な医学の知識はあまりいりません。どうすればいいかを考えてみましょう。
例えば、飛沫感染を防止するためには、とにかく“飛沫が飛ばないようにする”、“その飛沫を浴びないようにする” などを実現するために、“マスクを外すときにはしゃべらないようにする”、“マスクを外して何かするときは、飛沫が飛ばないようにする”、など、どう行動すればいいかを自分で考えられるような説明が必要だと思います。
また、感染者と接触しないようにするために、“密着しないようにする”、“感染者の触ったところに触らないようにする”とか、「手を洗いましょう」だけでは不十分で洗うタイミングこそが重要だと思います。“もし触ったと思ったら必ず手を洗うようにする”、“汚れた手で眼や顔を触らないようにする”、“家庭内でもタオルを別にする”、 “エレベータのボタンに触った時は、感染者が触ったと考え、手を洗う”、“銀行のATMのタッチパネルに触ったら手にウィルスが付着していると考え、手を消毒する”、“トイレの床にはウィルスが付着しているので、靴底に触らない”、など、具体的なウィルスのイメージを持ち、それを体内に取り込まないようにすることを説明するのがいいと思います。そういえば、鳥インフルエンザの時はマットがいろいろなところに敷いてあるのですが、今回のウィルス対策で店の出口にウィルス吸着用マットを敷いているところはあまり見ません。
私が講義の中で繰り返し説明している「手順よりも原理の教育」が重要だと思います。三密を避ける、という行動ではなく、なぜ、そうしなければならないか、を教育することが効果的なコロナ感染防止行動につながるのではないでしょうか。手順書を守ることは重要ですが、単に守るだけではなく、なぜ、そうしなければならないのか、という根拠が分かるように説明するのがいいと考えます。