医療ヒューマンファクター工学

Medical Human Factors TOPICS

はじめに
平成11年1月11日に横浜市立大学医学部附属病院で起こった患者取り違え手術事故以来、医療における安全について国民の関心が高くなりました。このため厚生労働省は平成13年4月、医政局総務課に「医療安全推進室」を設置し、また、医薬局(現 医薬食品局)安全対策課に「安全使用推進室」を設置し、今後、医療業界全体が医療安全について積極的に取り組んでいくことになりました。
産業界においては過去にさまざま事故を経験し、その事故の分析から、安全運航、安全操業にはヒューマンファクターの問題が極めて重要である、との認識が持たれるようになり、それぞれの分野で研究や現場での安全活動が行われています。
医療業界においても、今後、ヒューマンファクターの問題に多くの関心が持たれるのは時間の問題だと考えられます。むしろ、医療システムは人間の介在なしには成立しないので、ヒューマンファクターについては産業界以上に早急に、かつ、積極的に取り組むべき重大なテーマだと考えます。
しかし、産業界がそうであったように、あるいは、現在もそうであるように、ヒューマンファクターに関する用語や取り扱う対象に多少の混乱が生じています。これは、ヒューマンファクターに関する学問が、現在、発展途上にあるためであり、今後は少しずつ体系化されていくであろうと思います。
そこで、体系化が不十分であるヒューマンファクターに関する知見を少しでも整理し、理解を助けるために、このホームページで解説していきたいと思います。
ここで紹介するいろいろなトピックスの多くは、「Human Factors TOPICS(東京電力、1994)」を参考にし、それを医療用に筆者がすべて書き直したものです。
筆者はこれまで航空管制システムのヒューマンファクター、パイロットの自動化の問題、そして原子力発電プラントのヒューマンファクターに関する研究をしてきました。しかし、医療システムでの経験が不十分です。したがって、医療の実務者から見ると的外れなものがあるかも知れません。ただ、別な見方をすれば、医療システムを部外者であった筆者にはどのように見えるかは、視座が異なるという意味で、少しは参考になるのではないかと思っています。
このホームページは、ヒューマンファクターに関するいろいろなトピックスを気軽に読めるようにまとめました。これらのトピックスは、ヒューマンファクターに関する研究や活動のごく一部分にしか過ぎません。興味のある方は参考文献を読んで人間に関する知見を広げて、医療システムに応用していただきたいと思います。
本ホームページを読まれて疑問に思われたことや質問、コメント、アドバイス、時には励ましの言葉(やる気が出ます)などがありましたらどうぞ気軽にご連絡下さい。質問のすべてにお答えできるか分かりませんが、可能な限り反映して、よりお役に立てるホームページにしたいと考えています。


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