医療安全講習会にご利用下さい。

コロナ対応のために集合研修の実施が難しい、という声を病院の医療安全管理者から聞きました。
そこで、手軽に視聴できるようにYouTubeの動画としてアップロードしました。院内でご利用ください。ただし、院外での研修はご遠慮ください。
順番に視聴いただくように配列しておきますが、どこから視聴いただいても分かると思います。

ヒューマンエラー発生メカニズム 
~ ヒューマンエラーは原因ではなく結果である ~

ヒューマンエラーはたくさんの研究者や実務者により定義されています。
それらを要約すると、
① 人間のある行為があり、
② その行為がある許容範囲から外れたもので、
③ 偶然によるものを除く
となります。
このことから、ヒューマンエラーは結果から評価された「許容範囲外の行動」となります。

事故の原因は、「不注意というヒューマンエラー」だと言われることが多いのですが、不注意は「当事者の注意が他のものに奪われ、適切な注意配分がされなかった」という「結果」と考えることができます。その意味では「ヒューマンエラーは原因ではなく結果である」ということができます。

ヒューマンエラーの再発防止には、ヒューマンエラーとして分析するのではなく、評価と行動を分離して、「間違った行動」ととらえるのではなく、単なる行動、現象としての「行動」と考え、その背後にあると考えられる要因の因果関係を科学的に探索することが重要です。

ヒューマンエラーという言葉は便利なために広く使われていますが、逆に便利なために多少の混乱を引き起こします。そこで、レジリエンスの提唱者で有名なHollnagel博士は、「過誤的行為」という用語を提案しています。しかし、私は「過誤」という言葉が、またエラーを彷彿させ、不明確であるので、定義で示したように「許容範囲外行動」あるいは「許容外行為」の方が良いのではないかと考えています。
ただし、私自身も模索段階であり、今後もよりよい表現を求めていこうと思っています。

医療安全の基礎:医療現場でできるエラー対策

ヒューマンエラーは原因ではなく結果です。
ヒューマンエラーは、ある人間の行動があり、その行動の結果が、ある許容範囲から外れたものです。
人間行動は「人間側の要因」と「環境側の要因」によって決まります。エラー対策は、エラーの起こりにくい環境を作ることと、エラー環境におかれてもそれに負けけない耐性を高めることです。
この動画はすでに医療の現場で働いている医療関係者が個人でできるエラー対策とチームでできるエラー対策について説明します。

医療安全の基礎:安全文化の醸成 
~ヒヤリハット報告はなぜ必要なのか?~


医療の現場ではヒヤリハット情報が積極的に集められています。
なぜ、ヒヤリハット情報を集める必要があるのか、その根拠を説明します。
さらに、「安全文化の醸成」が医療安全に非常に重要であることを、歴史的背景や具体的な取り組み方法について説明します。

補足説明
医療では患者への影響が大きいので、患者への影響を基準にして「ヒヤリハット」は患者への影響のない「患者影響度レベル0」と解釈されています。
ただし、ここでは広く「事故に至らなかった事象」としてとらえています。事故の構造から説明すれば、どこかの防護壁で止まった事象のことです。
患者影響度だけで判断すると、事務系職員の関係した問題や医療従事者の針刺し(労働災害事故)は入らないことになりますが、安全文化の醸成には、組織を構成するあらゆる職種、あらゆる階層の人の参加が必須です。そして、最終的なゴールは、最後のスライドにある「気がかり事象」「気になる事象」、さらに、「改善」にまでつなげ、医療システムのリスクを低減し、効率のよいシステムにしてもらいたいと思っています。
これが組織の安全文化の醸成に必要な「情報に基づく文化」だと考えています。

医療安全の基礎:5S活動の勧め

医療安全の基礎の中で最も重要な活動は5Sです。

5Sとは、
整理
  いるものといらないものをハッキリ分けていらないものを捨てること。
整頓
  いるものを使いやすいようにきちんと置き誰でもわかるように明示すること。
清掃
  常に掃除をし、きれいにすること。
清潔
  整理・整頓・清掃の3Sを維持すること。
躾(しつけ)
  決められたことを、いつも正しく守る習慣づけのこと。

5S活動を実施すれば、
・職員のヒューマンエラーの削減
  職場環境の改善、決められたことを決められた通りに実行することが身につく
・患者の事故防止
  通路の確保、表示の明確化、不安全箇所の改善
・モノを探すムダの削減
  時間の削減、労力の削減、作業の効率化
・スペースの有効活用
  在庫の見直し、経費の削減
・職員・患者満足度の向上
  病院・病室が清潔、職員の対応が良い
  作業効率の向上、リスクの低減
等のメリットがあります。
ぜひ、積極的に取り組んでいただきたいと思います。
すでに活動されている病院は、現状に満足することなく、さらに、それを進めていただきたと思います。