医療の場面も日常の場面も同じ

チューブに関するトラブルがたくさん報告されています。
患者さんの自己抜去や接続間違い、介助作業中でのひっかけなど、結果や原因もいろいろです。中には、医療機器の電源ケーブルを足でひっかけて抜けてしまった、という事例も報告されています。
事故やトラブルが発生しないようにするためには、まず、作業環境におけるハザード(hazard:潜在的危険性)の発見能力が必要です。医療の現場はハザードがたくさんあります。そこで、このハザードの発見能力を養成するために行われている方法の一つがKYTなのです。
KYTは、危険予知訓練(きけんよちくんれん:Kiken Yochi Training)のことで、工事現場や製造現場などで、事故や災害を未然に防ぐことを目的に、そこで働く作業者が、当該作業に潜む危険を予想し、指摘し、具体的にどのように回避するかを考える訓練です。
医療の現場はハザードがいたるところに存在しているので、KYTは非常に有効な教育訓練手法です。実際に病院や介護施設などで広く採用されています。この能力は、医療の現場だけでなく、日常の場面でのハザードを発見することで高めることができます。逆に言えば、日常の場面でのハザードの存在を知覚認知できなければ、医療の現場でのハザードに対して十分な発見能力を身に付けることができません。
写真1は、医療安全全国共同行動主催の医療安全管理者養成セミナーにおいて、遠隔での実習のために機材を準備している様子です。電源コードやLANケーブルが床にあります。これが気にならなければ、医療の現場での医療機器の電源コードや計測用ケーブルのハザードを検知することは難しいと考えられます。
写真2は、電源コードやLANケーブルをテープで押さえ、歩くときに引っ掛ける可能性を少なくした状態です。医療の現場では移動を伴うことが多いので床にテープで固定する、ということは実質的に難しい場合もあると考えられますが、それでも「危ないぞ!」という感覚も持って、現場の状況に応じた対策を取っていただきたいと思います。

写真1 準備の段階
写真2 配信中の状況